目的に正面から取り組んで、あなたが最善を尽くしつつあるとき、失敗しても、それは恥ではないのである。
我々の懐いている理想は、我が生涯に達成し得る事業の絶好の尺度となり得るものなのである。
それはその人の生涯の構図を定める青写真となるものである。人間が堕落するのは、あまりに低空飛行的な低い理想を持っているからである。
リンカーンは生涯の理想を高き処にもった。彼は偉大なる生涯の理想を描いて、大建築家が自己の描いて設計図に従って高層建築を築きあげていくように、その高き理想に従って生涯を築いていったのであった。
巨大なる高層建築が建てられるとき、それを構築するための材料となる”石材”や”鉄材”の一片一片は、それを如何に何処に用いるかが、建築家の設計図の中に、どんな細目に至るまでも注意深く考慮されて描かれているのである。そうでなければ、その建築物も安全でもないし、美観を保つこともできないのである。
およそ大成功者といわれる人々は、偉大なる生涯の青写真をもっており、その青写真に従って自己の生涯を築いていったのである。
およそ人間性に存する最も奇怪なる逆説(パラドックス)は、男女とも、見たところ”成功”をめがけて自己の全力を尽くしているのに、しかも彼らはその”成功”を推し進めると考えられる事柄を為し、語り、考えつつあるのに、かえってあべこべに成功から遠ざかって行きつつあることである。彼らは終始、自己の努力目的を、何らかの愚行や、弱さや、無分別によって相殺して行きつつあるのである。彼は常に自分を他の人から誤解させるようなことを喋り、人から信用を失うような愚行を知らず識らず行うのである。彼らは見たところ営々基礎工事を固めつつあるかのようでありながら、基礎工事を掘り返しているのである。
多くの人々は古代トロイの勇者のように目指す栄冠を勝ち得ようとして営々と働くのである。そして我こそはの自負心でふくれあがりながら、何をするかと思うと、ある愚かなる弱点によって、年を重ねて築き上げてきた栄光の建築物の足場をその土台のところから、突き崩して倒してしまうのである。この種の人々の生涯は、常に”登攀する”かと思うと、”倒れる”の繰り返しの連続であって、それだから、どの目標にも到達しないのであるし、何かの価値ある仕事をも成し遂げることは出来ないのである。常に登ることは登るんだがそれを相殺する何らかの行いをする―それが運命の最大の躓き石となるのである。
数百千の人々が、自己が得ようとして努力しつつあるその成功そのものに背を向けて、目標から遠ざかるような行動を一生涯しているのを見ることは全く悲劇だというほかはないのである。どうして彼らが幸運から自ら遠ざかりつつあるかというと、すぐカッとなる性格を自分でコントロールすることが出来なかったり、何らかの、ほんのわずかな無分別の行為をしたり、その他自ら注意すれば矯正することのできるはずの弱点や欠点を矯正をしておかなかったからなのである。
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